• 木. 5月 30th, 2024
こしき島のトシドン

現在の伝承とかぶりさま

さて、甑島に日置の名は残っていない。

しかし、トシドンという形で【かぶりさま】信仰は残っている。

ここからは来訪神と言う観点から、唐津で始まり、甑に伝わり現在も残る来訪神と言う観点から考えてみたい。

甑島のトシドンは鬼のような顔の年神である。

普段は天上界に住んで下界を眺めており、特に子供を好み、彼らの挙動を見ている。

毎年、大晦日の夜になると山の上に降り立ち、首切れ馬に乗って鈴を鳴らしながら家々を回り、その年に悪さをした子供を諌める。そして長所を褒める。

さらに歳餅(としもち)という餅を与え、去って行く。歳餅は人に一つ歳を取らせる餅といわれ、これを貰わないと歳を取ることができないといわれている。歳餅はお年玉の原型とされる。

トシドンはシュロの木の皮などで作った衣服をまとっており、ポリネシアの島々の祭礼を思わせる。

仮面を被って仮装した来訪神の祭礼は南九州の多くの地域に残っており、トシドンの他にはトイノカンサマ(屋久島、宮之浦)、トシトイドン(種子島、国上)、メン(末吉町熊野神社)、メンドン(指宿市山川利永)、八朔メン(硫黄島、三島村)、メン(黒島、大里)などがある。

日本における代表的な来訪神行事である鹿児島県薩摩川内市下甑島のトシドンは、「甑島のトシドン」として、2009年(平成21年)に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。日本政府は、2016年(平成28年)に「甑島のトシドン」に他の来訪神行事を加えて8件に拡張した「来訪神:仮面・仮装の神々」の無形文化遺産登録をユネスコに提案した。しかし、審査が先送りされたため、2017年(平成29年)2月にはさらに10件に拡張して再提案し、2018年(平成30年)11月29日に登録(代表一覧表記載)が決定した。登録に含まれる10件の来訪神行事は、以下の通りである。なお、これら10件の行事はいずれも重要無形民俗文化財に指定されている。

吉浜のスネカ – 岩手県大船渡市

米川の水かぶり – 宮城県登米市

男鹿のナマハゲ – 秋田県男鹿市

遊佐の小正月行事 – 山形県飽海郡遊佐町

能登のアマメハギ – 石川県輪島市・鳳珠郡能登町

見島のカセドリ – 佐賀県佐賀市

甑島のトシドン – 鹿児島県薩摩川内市(下甑島)

薩摩硫黄島のメンドン – 鹿児島県鹿児島郡三島村(薩摩硫黄島)

悪石島のボゼ – 鹿児島県鹿児島郡十島村(悪石島)

宮古島のパーントゥ – 沖縄県宮古島市(宮古島)

この事から、逆説的にいえば、かぶりさま信仰を持ち、島原の乱でバラバラに散った人々が自分の見つけた場所(パライソ)で、形を変えて後世にかぶりさま信仰を残したのではないかと考えられる。

その他の来訪神行事

日本の来訪神行事には、無形文化遺産への登録が決定したもののほかに、以下のものがある。

ホロロン – 岩手県。子供らが「ホロロン」と掛け声をかけながら家々を訪れ、

菓子や小遣いをもらう

ナモミ – 秋田県、岩手県。ナナミとも。「吉浜のスネカ」はこの一部。

あっぽっしゃ – 福井県福井市の旧越廼村蒲生・茱崎地区。

二十五日様-東京都神津島

ホトホト – 島根・鳥取両県。

コトコト – 岡山・広島県山間部、山口県。地域毎にトロヘントロヘン、トロベイトロベイ、トノベイ、トヘ、とも言う。

弥五郎どん – 宮崎県都城市・日南市、鹿児島県曽於市(弥五郎どん祭り:各県の指定無形民俗文化財)

メゴスリ – 宮崎県串間市

大王殿 – 鹿児島県日置市(せっぺとべ:日置市指定無形民俗文化財)

姶良郡湧水町(大王殿祭り)

日置と来訪神

ここでも日置の名前は登場する。日置の大王殿について詳しくは下記である。

大王殿(でおどん/でおうどん/うぉーどん)とは、鹿児島県内(薩摩・大隅地方)の年中行事において出現する仮面神の一つである。日置市日吉町日置で行われる御田植祭「せっぺとべ」に出現する巨大な神像などが著名である。地元芋焼酎の銘柄名にもなっている。

・概要

南九州地方や奄美諸島などでは盆の終わりや、

秋の収穫感謝祭である「ホゼ(放生会)」、年の瀬の時期などに仮面を着けた来訪神が現れる風習が複数存在する。

悪石島のボゼや薩摩硫黄島のメンドン、甑島のトシドンのほか、鹿児島県曽於市・宮崎県都城市・同県日南市の弥五郎どん、同県串間市のメゴスリなどが知られるが、大王殿もそれに似ており、鹿児島県日置市「せっぺとべ」と、同県姶良郡湧水町吉松地域の大王殿祭りに出現する。ただし読みはせっぺとべでは「デオドン」・「デオウドン」、大王殿祭りでは「ウォードン」である。

・せっぺとべの大王殿

毎年6月初旬に日置市で開催される「せっぺとべ」の大王殿(デオドン)は、

日置八幡神社が主催する祭に現れる。体長3メートルほどの巨人で、白い顔に薄茶色の髪と髭を蓄え、茶色に染めた着物を着て腰に刀を差す。

神田にて若者達による「せっぺとべ」が行われる際に八幡神社から出発(御下り)し、神事を見守る。曽於市の弥五郎どんに似ているが、弥五郎どんよりも小型である。

顔(仮面)は、1641年(寛永18年)に島津久慶が奉納したものを代々使用してきたが、2008年(平成20年)に損傷が激しくなったとして保管され、新しいものに交換された。

地元の酒造メーカー小正醸造が「薩摩の大王殿」という芋焼酎の銘柄を販売している。

ミルク – 沖縄県沖縄本島・八重山列島各地

アカマタ・クロマタ – 沖縄県石垣市(石垣島)・竹富町(西表島・小浜島・上地島)

マユンガナシ – 沖縄県石垣市(石垣島)

フサマラー – 沖縄県竹富町(波照間島)

このほか、「カセ鳥」などの小正月の訪問者も来訪する異形の者、という形式は類似している。

上記の全てが、唐津の【かぶりさま】信仰を下敷きにしているとは言えないが、

南九州地方、薩摩地方、そして、各離島部には少なくとも、その影響があったのではないかと考えられる。

特に注目したいのが奄美大島に伝わる伝承であった。

ホゼと呼ばれる来訪神信仰と共に、巨石信仰が残っているのだ。

これは唐津の『タチイワ』、甑島の『竪岩』との共通点でもあると考えられる。

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